●特集 メヒカリという魚
私たちのまわりには,たくさんとれていても知らない魚がたくさんいる。流通にまわらないだけでなく,知らずに食卓にあがっている魚もいるだろう。今回の主役,深海にすむメヒカリという魚は,一般的には目にすることが少ない。ところが地域によっては多数市場にならび,特産品になるようなポピュラーな存在なのだ。メヒカリとはどのような生き物なのか,漁業をはじめとするメヒカリをとりまく人間活動もふくめて,本誌で「メヒカリという魚がわかる」特集を組んだ。
猿渡 敏郎 「メヒカリ」特集によせて
佐藤 友康 アオメエソ属の系統と分類
猿渡 敏郎 メヒカリ(アオメエソ属魚類)の仔稚魚−小さな体が明かす大回遊
平川 直人・鈴木 直樹・成松 庸二 東北海域におけるアオメエソの加入機構−メヒカリはどこからやってくる?
阪地 英男 土佐湾におけるメヒカリの生活史と漁業
高橋 正和 常磐・鹿島灘海域における底魚資源変動とメヒカリ
水野 時子 メヒカリの栄養
山内 信弥 メヒカリの飼育展示
猿渡 敏郎・星野 浩一<コラム>マルアオメエソ Chlorophthalmus borealis Kuronuma and
Yamaguchi 1941 のホロタイプ(完模式標本)について
●連載
林
健一 日本産エビ類の分類と生態【162】 タラバエビ科−タラバエビ属4・ベニエビ属
佐々木 克之 内湾および干潟における物質循環と生物生産【52】瀬戸内海漁業10.イカナゴ
原口 昭 日本の湿原【7】 深泥池 第1部
鷲見 栄一 懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【7】(最終回) 沿岸海域での植物プランクトンの鉛直分布
横浜 康継 海藻という植物【8】 海藻の水平・垂直分布と温度・光条件
グリゴーリー・イヴァノヴィチ・ガラジー,長縄 秀俊 「バイカル湖学」入門【6】 氷の世界(1)
●Information
朝倉
彰 国際甲殻類学会(TCS)2009年 日本大会について
●全国水産試験場長会 会長賞
日下部
敬之・岡本 繁好・玉木 哲也・大美 博昭・辻野 耕實・反田 實 大阪湾および播磨灘におけるイカナゴの資源管理に係る調査研究
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて 北極のハードワーカー2(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 フィジーの思い出(3) (飯島 明子)
●巻末特集 Research Article
今年もノーベル賞が発表になったが,物理,化学の分野で賞をとった日本人の研究はすべて基礎研究を軸にしており,発表後何十年もたったもので,基礎研究の大切さが見直された瞬間でもあった。研究の現場では基礎研究は大切とされながらも,成果が早くでやすい応用分野が注目されがちな昨今であるが,地道に採集や観察を行い,幾度にもわたる現場との往来や文献とにらめっこをし過去と議論しながら時間をかけてすすめていく基礎研究にこそ,これからの科学が発展するためのヒントがある。今回は各分野からさまざまな視点で行われた研究を紹介した。
小山 洋道 ホヤ成体の感覚器官
井口 亮,伊藤 寛治,高井 晋平,上野 正博,前田 経雄,南 卓志,豊原 治彦,林 勇夫 日本周辺に生息する深海性腹足類エゾバイ・エゾボラ属の遺伝的な種内分化と種間関係に関する研究(日本海を中心に)
細田 龍介 由良湾におけるアマモ復活の経緯とその検証−自然と人間の共生の例−
齋藤 暢宏 「稀少動物」に指定されている日本産甲殻類
●連載
林
健一 日本産エビ類の分類と生態【161】 タラバエビ科−タラバエビ属3
佐々木 克之 内湾および干潟における物質循環と生物生産【51】瀬戸内海漁業9.カタクチイワシ
原口 昭 日本の湿原【6】 北海道北部の湿原
鷲見 栄一 懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【6】粒径分布の変化からみた凝集現象
横浜 康継 海藻という植物【7】 プロダクトメーターの応用範囲
グリゴーリー・イヴァノヴィチ・ガラジー,長縄 秀俊 「バイカル湖学」入門【5】 船舶交通
●全国水産試験場長会 会長賞
桑田
知宣 全雌アユ種苗の量産技術の開発とその実用化の現状
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて 北極のハードワーカー 1(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 フィジーの思い出(2) (飯島 明子)
●特集 メタンハイドレート−資源開発と環境影響評価
世界的にエネルギー資源の枯渇が心配されているなかで,新たなエネルギー資源としてメタンハイドレートに注目が集まっている。その研究はどこまで進んでいるのか。最先端のエネルギー開発技術の一端に目を向けるとともに,それに伴って行われる海域環境への影響評価やモニタリング技術にも焦点をあてて,具体的な取り組みや課題について紹介する。
入澤 博 環境に配慮したメタンハイドレート資源の開発に向けて
荒田 直・斉数 恊 メタンハイドレート資源開発を対象とした環境影響評価にかかわる研究概要
鋤崎 俊二・石原 靖文・中田 喜三郎 東部南海トラフの海域環境と環境影響評価手法
中田 喜三郎・プージタ ヤパ・ラリス ダサナヤカ・鋤崎 俊二 深海域から漏洩したメタンガスの挙動予測モデルの開発
石原 靖文・矢部 いつか メタンハイドレート分解生成水放出影響予測モデルの開発
荻迫 栄治・西尾 伸也・傳田 篤 東部南海トラフの海底地盤物性と構成式の構築
亀岡 裕行・岡部 直司・荻迫 栄治 地層変形予測プログラムの開発
粟島 裕治・上田 聡 メタンハイドレート生産時の環境影響評価のためのモニタリングシステムの開発
澤田 信一・深澤 強・桶谷 能史 海底から海水中へのメタン漏洩を検知するためのセンシング技術の開発
帆秋 利洋・福場 辰洋・藤井 輝夫・布施 博之 海底表層でのバイオマーカーを利用したメタン漏洩検知技術の開発
横山 幸也・斎藤 秀樹 地層変形モニタリングシステムの開発
岡田 陽 メタンハイドレート開発における安全管理と環境管理
安部 裕一 メタンハイドレートと地球環境
橋場 芳文 我が国のメタンハイドレート開発の取り組みと今後の展望について
●連載
林
健一 日本産エビ類の分類と生態【160】 タラバエビ科−タラバエビ属2
原口 昭 日本の湿原【5】 霧多布湿原―道東の海洋性湿原
鷲見 栄一 懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【5】河口汽水域での懸濁態粒子の集積
横浜 康継 海藻という植物【6】 海藻の光合成を測定する(その2)
グリゴーリー・イヴァノヴィチ・ガラジー,長縄 秀俊 「バイカル湖学」入門【4】 原著序文
山本 悠・山岡 耕作 キューバの漁業の現状【2】キューバに移入されたヒレナマズ
佐々木 克之 内湾および干潟における物質循環と生物生産【50】瀬戸内海漁業8.香川県の漁業(その2)−貝類漁獲量変動
●全国水産試験場長会 会長賞
須藤
篤史 脂肪酸組成を用いたカキの産地判別技術の開発
●会議レポート
齊藤 誠一・松村 皐月・Trevor Platt・Shuba Sathyendranath 衛星リモートセンシングを利用した国際的漁業管理の動き−始動したSAFARIプロジェクト
●書評
鈴木 美和 「鯨類学」<村山 司(編著)>
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて 花より団子(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 フィジーの思い出(1) (飯島 明子)
●追悼文
David Cushinf FRS 1920-2008(Trevor Platt, Tsuyoshi Kawasaki, Sei-ichi
Saitoh/訳:齋藤 誠一)
●特集「英虞湾 新たな里海創生」(千葉 賢・前川 行幸・松田 治:編)
水圏生物の行動追跡として発展してきたバイオロギングの新たな可能性が,機器の進歩とともに,ここ数年で飛躍的に広がってきている。本特集では,バイオロギングの最新技術を用いてわかってきた魚,鳥,海獣類などさまざまな動物たちの環境適応に対する,知られざる生理機能を紹介した。
千葉 賢・山形 陽一 流動場の特徴と海水交換特性
原口 浩一・増田 健・山形 陽一・千葉 賢 水質の特徴と経年変化
山形 陽一・千葉 賢・原口 浩一・清水 康弘・百島 則行・久野 章仁・松尾 基之 底質の特徴と底質悪化現象
粟冠 真紀子・粟冠 和郎・中野 みよ・中島 潤 環境浄化に関連する微生物
国分 秀樹・高山 百合子 干潟の特徴と再生実験
前川 行幸・倉島 彰・森田 晃央・上野 成三・高山 百合子・大松 秀史・清水 浩視・濱田 稔・中西 嘉人・橋爪 不二夫・山本
有子 アマモ場の特徴と再生技術
増田 健・千葉 賢・谷村 篤・畑 直亜・原口 浩一 基礎生産と動植物プランクトンの特徴
渥美 貴史・増田 健・山形 陽一 真珠養殖とその環境への影響
高橋 正昭・井岡 幹博・千葉 賢・篠田 成郎 集水域における土地利用と海域への負荷
千葉 賢・G. A. Anggara Kasih・山形 陽一・前川 行幸・松田 治 英虞湾の物質循環と底質悪化原因の検討
<コラム>
加藤 忠哉 英虞湾における地域結集型共同研究事業について
松田 治 里海の考え方にもとづいた海域の再生方策
●連載
林
健一「日本産エビ類の分類と生態【159】 タラバエビ科−タラバエビ属1」
佐々木 克之「内湾および干潟における物質循環と生物生産【49】 瀬戸内海漁業8.香川県の漁業」
横浜 康継「海藻という植物【5】 海藻の光合成を測定する」
鷲見 栄一「懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【4】 海底境界層と再懸濁現象」
原口 昭「日本の湿原【4】 落石湿原―霧がつくる湿原(その2)」
グリゴーリー・イヴァノヴィチ・ガラジー,長縄
秀俊「バイカル湖学」入門【3】 気候」
川嶋 昭二「宮部金吾博士:北海道昆布調査旅行日記【4】<最終回>」
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて 海の中のカーテン(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 文系大学野外実習顛末 (飯島 明子)
●追悼文
David Cushinf FRS 1920-2008(Trevor Platt, Tsuyoshi Kawasaki, Sei-ichi
Saitoh/訳:齋藤 誠一)
●特集「動物の生理を解析するバイオロギング」
水圏生物の行動追跡として発展してきたバイオロギングの新たな可能性が,機器の進歩とともに,ここ数年で飛躍的に広がってきている。本特集では,バイオロギングの最新技術を用いてわかってきた魚,鳥,海獣類などさまざまな動物たちの環境適応に対する,知られざる生理機能を紹介した。
荒井 修亮 「「動物の生理を解析するバイオロギング」によせて」
小島 隆人・津田 裕一・原 隆・白須 邦夫・内藤 靖彦 「魚にやさしく失敗の少ない心電図導出法を求めて」
牧口 祐也・永田 鎮也・村田 秀樹・小島 隆人・上田 宏 「心拍ロガーを用いたシロザケ親魚の遊泳行動解析」
牧口 祐也・新居 久也・中尾 勝哉・上田 宏 「標津川における EMG 発信機を用いたシロザケ親魚の遡上行動解析」
光永 靖 「加速度データロガーによる魚の酸素消費量推定」
新妻 靖章 「潜水時の海鳥の体温調節 海鳥はどのように潜水時の体温を調節しているか?」
坂本 健太郎 「ペンギンの集団潜水と息のこらえかた」
ロペルクデル ヤン・加藤 明子 「カツオドリの心拍数の変化から求めた羽ばたき飛翔と滑空のエネルギーコストの比較」
渡辺 佑基 「潜水動物が受ける浮力の影響」
●連載
林
健一「日本産エビ類の分類と生態【158】 タラバエビ科−モロトゲエビ属3」
佐々木 克之「内湾および干潟における物質循環と生物生産【48】 瀬戸内海漁業7.大阪府と大阪湾漁業」
横浜 康継「海藻という植物【4】 海藻の色彩を構成する色素
鷲見 栄一「懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【3】 粒径スペクトルの特性」
原口 昭「日本の湿原【3】 落石湿原―霧がつくる湿原(その1)」
川嶋
昭二「宮部金吾博士:北海道昆布調査旅行日記【3】」
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて すっぱいニシンとくさいニシン(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 海洋生物版「千夜一夜」 (飯島 明子)
●特集「水族館における鯨類の繁殖」
水族館は,通常我々が出会うことのできない生き物を身近に感じさせてくれる,貴重な体験ができる場所だ。また,水族館のもつ大きなテーマに「種の保存」があり,飼育とともに繁殖も大切な研究のひとつである。しかし,これらは一筋縄でいくものではなく,研究や実践にたえまなく努力を積み重ねている分野である。
本特集では,飼育下における鯨類の繁殖についてそれぞれの水族館で行われている試みを,その思想や歴史,今後の課題とともに紹介する。
吉岡 基「特集「水族館における鯨類の繁殖」にあたって」(正誤表)
北村 正一「バンドウイルカの繁殖への取り組み」
宮原 弘和「飼育下におけるミナミバンドウイルカの繁殖」
地本 和史「水族館でのカマイルカの繁殖と成長,将来に向けて」
神宮 潤一「イロワケイルカの繁殖」
古田 正美「スナメリの飼育と繁殖」
阿久根 雄一郎「シロイルカの飼育下繁殖」
勝俣 悦子「飼育下におけるシャチの繁殖」
●連載
林
健一「日本産エビ類の分類と生態【157】 タラバエビ科−モロトゲエビ属2」
横浜 康継「海藻という植物【3】 カラフルな色彩美の謎
鷲見 栄一「懸濁態粒子の粒径分布の現地測定【2】 粒径分布と分画」
原口
昭「日本の湿原【2】 春国岱―砂丘と塩湿地」
川嶋 昭二「宮部金吾博士:北海道昆布調査旅行日記【2】」
●Research Article
奥 修「海産浮遊珪藻 Chaetoceros pseudocurvisetus の休眠胞子形成と生理生態学的特徴」
●全国水産試験場長会 会長賞
松井
繁明・佐藤 博之・山本 千裕・渡辺 大輔「グミの防除に関する研究 塩分処理によるグミ駆除技術の開発」
●コラム
魚影逍遥−魚に発信機をつけて 私を虜にした魚(三田村 啓理)
海で拾った万華鏡 ところ変われば (飯島 明子)