水環境の今と未来 藻類と植物のできること

水環境の今と未来

神戸大学水圏光合成生物研究グループ:編

A5判/141ページ/定価 本体1,800円+税
ISBN978-4-915342-53-0

日本は海,陸を問わず水環境に恵まれ,それを利用してきた。水域にとどまらず,私たちをとりまく環境はいま大きな危機をむかえている。
植物は,地球の環境を維持していくのに重要な生物である。水中に生息する植物は藻類から維管束植物にいたるまで実に多様であるが,その利用にむけての研究ははじまったばかりだ。
私たちがこれからも水環境を守り,持続利用していくために,水生植物への理解を深め,これらがどのような可能性を秘めているかを解説した。
●目次●
1:海藻草類からみた都市沿岸域の水環境とその改善(川井 浩史)
・はじめに
・海の光合成生物の多様性と特徴
・沿岸の埋め立てと底生生物の減少
・湾内の栄養塩濃度と透明度
・底層貧酸素水塊の発生
・港湾域と移入海洋生物
・護岸形状と生物多様性
・湾奥部のその奥にある閉鎖海域
・海藻を用いた水質改善
・湾奥部の人工干潟
・運河の水質改善に向けて
・おわりに
・引用文献

2:陸水における水生植物の多様性と保全(角野 康郎)
・水生植物とは
・水生植物の多様性
・絶滅危惧種の集中と保全の課題
・急増する外来水生植物
・水生植物の利用を考えるー有効性と限界ー
・水生植物の多様性保全の視点/引用文献

3:水生植物の生理(三村 徹郎・村上 明男)
・水環境で暮らす多様な植物たち
・植物が水の中で暮らすということ〈(1)光合成(2)温度や重力などの物理環境(3)栄養塩の吸収(4)栄養塩吸収の分子機構〉
・環境に適応した遺伝子の利用
・水生植物の基礎と応用研究の今後
・引用文献
・参考図書

4:海藻を用いた海域環境再生ー陸と海をつなぐ循環型社会の実現に向けてー(中西 敬)
・都市における海辺の機能
・食料の自給率と環境問題・物質循環のひずみ
・陸と海をつなぐ循環型社会
・大型藻類のバイオマス利用
・海藻による環境再生の試み〈(1)垂直護岸における藻場造成実験(2)アオサの有効利用による循環型社会形成の試み〉
・まとめと藻類ならびに藻類研究者の役割について
・引用文献

5:藻類と環境(池田 知司)
・淡水赤潮の発生と対策事例〈(1)対象貯水池の概況(2)増殖制限物質とその供給源(3)Peridinium bipes の増殖生理的特性(4)数値モデルによる増殖再現と要因の解析(5)対策案の検討と効果〉
・海洋深層水を発電所に利用した場合の環境影響予測〈(1)深層水の発電所利用によるCO2削減効果(2)植物プランクトン群集への影響(3)海藻への影響(4)深層水の大量取・放水影響(5)海域肥沃化の可能性〉
・藻類と環境からみた今後の課題
・引用文献

6:マリンバイオによる環境浄化と資源回収(仲山 英樹)
・はじめに
・身近でローカルな視点で考える
・地球に広がる塩類集積環境の金属汚染
・海洋エネルギーを活用したマリンバイオ
・濃縮海水を標的としたマリンメタルバイオへの挑戦
・おわりに
・用語説明
・引用文献

7:微細藻類の工学的応用ー海洋微細藻類の可能性ー(竹山 春子・松本 光史・松永 是)
・はじめに
・海洋微細藻類による二酸化炭素の有用物質への変換〈(1)高度不飽和脂肪酸の生産(2)UV ー A 吸収物質〉
・海洋微細藻類を用いたエネルギー生産〈(1)海洋微細藻類を利用したエタノール生産(2)海洋微細藻類を用いたバイオディーゼル燃料生産(3)固形燃料としての活用(4)海洋における微細藻類の大量培養システムの構築〉
・おわりに
・引用文献

8:バイオマスからの燃料,化学品生産ー水生バイオマス利用への期待ー(蓮沼 誠久・近藤 昭彦)
・はじめに
・微生物によるバイオマス変換におけるキーテクノロジー  ーアーミング技術ー
・アーミング技術によるセルロースエタノール生産用スーパー酵母の開発
・基幹化学品生産への展開
・水生バイオマス利用への期待
・引用文献
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